みなさま、ごきげんよう。研究において1番得意なことは研究発表の31等星です。
今回は「発表で自分の研究内容をうまく伝えられない」と悩んでいる人のために、わかりやすい研究発表をするための方法についてお話しします。特に人前で話すのが苦手という人に読んでいただきたいです。
僕も元々人前で話すことが苦手でしたが(というか今でも苦手ですが)、スライド作りの方法を学んだことと発表練習を何度も何度もしたことで周りの人から「発表が上手い」と褒めてもらえるようになりました。
実際にこれまでに参加した学会で4回優秀発表賞を頂いているので、学部生や修士の学生に良い研究発表の仕方を教えられる程度の実力はあるのかなと自負しております。
本記事では、そんな僕がどんなふうに研究発表の準備・練習をしているかを紹介します。
これから紹介することは僕個人の考えなので、全部が全部が正しいというわけではないかもしれません。
研究発表のやり方には絶対的な正解はないので、本記事を参考にしつつもぜひ自身でいろいろアレンジしてみてください。
以下では、わかりやすい研究発表をするための方法を
- 研究発表の心構え
- スライドの作り方
- 発表練習
の3ステップに分けてお話しします。
それ以外にもおまけとして、
- 発表賞を受賞するメリット3つ
- 僕が研究発表が苦手だった時の話
も書きました。
これらが研究発表に力を入れるモチベになってくれれば嬉しいです。
研究発表3ステップ
以下では研究発表の内容そのものを良くする方法というよりは、発表の体裁を綺麗に整える方法を主にお話しします。
内容を良くする方法に関しては、「聴衆のレベルに合わせた話をする」以外に言えることがあまりないので、本記事では詳しくは触れないことにします。
何か思いついたら新しい記事を書くかもしれません。
研究発表の心構え
研究発表での大事な心構えは
- 聴衆は神である
- 聴衆はあなたが思うほど賢くない
と思うことです。
まず前半の「聴衆は神であると思う」という方についてですが、聴衆というのは自分の発表をお聴きなさってくださる神様なので、聴衆様には最大限のおもてなしをしましょう。
具体的にやるべきことは、聴衆の理解・集中の妨げになる要素を徹底的に排除した発表スライドや説明を準備することです。
あなたの20分の発表を30人が聞くとしたらトータルで10時間分の「人の命」を頂くことになるので、その命よりも価値のある研究発表を目指しましょう。
こんなことを偉そうに言ってる僕もここまでできている自信は全くありませんが……(この記事を読むことに貴重な「命」を使ってくださっている皆さん、ありがとうございます。)
続いて後者の「聴衆はあなたが思うほど賢くないと思う」についてです。
聴衆というのはあなたが思っているほど記憶力が良くないので、あなたの説明を聞いても数ページスライドをめくった頃には高確率でその説明を忘れてしまいます。
なので「一度話したから聴衆は覚えてくれているだろう」と高を括らず、難しい用語や説明は必要であれば何度でも繰り返すようにしましょう。
そもそも研究発表を聞くいうのことは世界初の発見を聞くことあるため、難易度が非常に高いです。
なのであなたと同じ専門分野に所属する専門家でもない限り発表内容をすぐに理解することなんてできません。
このことを頭に入れた上で、常に聴衆にフレンドリーな発表ができると良いですね。
というわけでまずは心構えとして、聴衆は神であり、聴衆はあなたが思うほど賢くないと思いましょう。
スライドの作り方
聴衆の脳にかかる負担を最小限にするようなスライドを作りましょう。
また、スライドは読み物ではないので、聴衆が読もうと思ってしまうようなスライドは最悪です。
できる限り視覚的に主張を伝えるようにしましょう。
スライドには図とキーワードだけを載せて、その図の読み方やキーワードの説明を発表の際に自分の言葉で補うイメージです。
資料作りの際に役立つウェブサイトが以下の「伝わるデザイン」です。
このサイトを運営している方が出している本『伝わるデザインの基本』もありますが、このウェブサイトだけでも十分役に立ちます。より詳しく知りたい方は本の購入も検討してみてください。
スライドデザインをちゃんと学んでる人はほとんどいないので、ほんのちょっと学ぶだけでも周りと大きく差をつけることができます。
スライド作成術を学ぶことは、あらゆる研究のプロセスの中でも努力のコスパが最も良いものだと個人的には思っています。
ぜひ皆さんも少しだけでも勉強してみてください。
以下では僕がスライド作りの時に意識していることを具体的に列挙します。
その説明の補助として、僕が普段作っているようなスライドを載せておきました。
主にこれを使いながらスライド作りのコツをお話をします。
あらゆるところを揃える
まず第一に、あらゆるところを揃えましょう。
スライド作りの際に気をつけることはいろいろありますが、これが最も大事だと言っても過言ではありません。
下図のように、文頭や図のサイズを揃えるだけでスライドの見栄えはグッと良くなります(赤線は説明のための補助線です)。
とにかく位置を揃えましょう。
これは1枚のスライド内だけでなくスライドが変わるときにも当てはまります。
例えばスライドのタイトルの位置は、スライドが切り替わっても同じになるようにすると良いです。
また細かいテクニックですが、複数の図を並べたいときに図のサイズが合わない時は背景(下図ではグレーの影)をつけてあげましょう。
揃っていないものを揃っているように見せられます。
メインメッセージを書く位置については、中央揃えか左揃えのどっちが良いか賛否両論ありそうです。
1つ下の図ではメインメッセージが左揃えですが、これは2つ下の図のように中央揃えでも良いかもしれません。
左揃えの方が揃っていて読みやすい一方で、中央揃えの方がメッセージが強調されて見えます。
お好みで好きな方を使えば良いと思います。
僕はメインメッセージが複数行ある時は左揃え、1行だけの時は中央揃えにすることが多いです。
さらに概念的にも揃えましょう(抽象的な説明ですみません。わかりづらいと思っても、とりあえずこの節を最後まで読んでみてください)。
例えば、スライドのタイトルのところには必ずタイトルになるべきことを書く、サブタイトルにはサブタイトルになるべきことを書くなどを徹底します。
もっと大袈裟な例を挙げるとするなら、「肉・魚・野菜・果物」という4つのグループを並べる時に「肉・魚・野菜・リンゴ」みたいに書かない、ということです。
この例では明らかにリンゴだけ粒度が揃っていないことがわかりますが、研究のように複雑なことを説明する時にはいつの間にか粒度が揃っていないことがあるので気をつけましょう。
明確に論理構造(主従関係)を意識してスライドに載せる言葉を選ぶと良いですね。
スライド作成の極意はあらゆるところを揃えることなので、まずはとにかく全てを揃えましょう!
文字をたくさん書かない
本章の冒頭にも書きましたが、スライドには文字を書きすぎないようにしましょう。
これはスライド作りの際に2番目に大事だと思っています。
スライドは読み物ではないので、視覚的に主張を伝えられるように作れると良いですね。
ただし、後でスライドを資料(読み物)として残さなければいけない場合は、多少文字が多めになっても問題ありません。
以下に「文字を書きすぎない」ということについて、2つ具体例をあげておきます。
1スライドに10行以上書かない
目安として僕は1スライドに10行以上書かないようにしています。
目的のスライドやまとめのスライドは文字が多くなりがちですが、その場合でも太字・スペース・色などでメリハリをつけて「文字が多い感」をできるだけなくしましょう(下図参照)。
可能であればフローチャートのようなものを作るも良いと思います(下図参照)。
文を書かない
例えば「XXXという実験を行った結果、YYY という結果が得られました」と言いたい場合はスライドには「実験:XXX —> 結果:YYY」くらいを書けば事足ります。
キーワードだけ書いて足りない部分は喋りで補うイメージです。
文を書かないと本番で喋ることを忘れてしまうのであれば、それは単なる発表の練習不足なので練習量を増やしましょう。
確かにスライドに文を書けばカンペの代わりになって発表者はラクになりますが、聴衆はその文の中からキーワードを探し出さないといけなくなるので辛いです。
聴衆は神なのでその神に辛い思いはさせないようにしましょう。
図に文字を書き込む
「近づける」「色を揃える」などによって図が何を表しているか一目でわかるようにします。
凡例を書くよりも説明書きを図の中に書き込む方が直感的に理解しやすいです(下図参照)。
色も揃えるとよりわかりやすいですね。
図にタイトルをつける
図が何を表しているかが聴衆にすぐ伝わるように、図の上にタイトルを書くと良いでしょう。
例えば、横軸が時間で縦軸がXという量を表す図にタイトルをつけるとしたら「Xの時間発展」とかですね。
タイトルがなくても横軸・縦軸のラベルを見れば何の図はわかると思いますが、図にタイトルがある方が聴衆に情報が伝わるスピードが早くなります。
これは単純に、横軸・縦軸の2つの情報を見るよりタイトルという1つの情報を見る方がラクだからです。
グラフのラベルや軸の数字を大きく書く
スライドに載せる図は論文の図をそのまま使うことが多いと思いますが、論文用の図はスライドに載せるにしては文字が小さいですので、スライドではそれを大きくしましょう。
スライド用に図を作り直しても良いですが、面倒なので僕はスライド上で文字を書いて上から貼っています。
文字のサイズに意味をもたせる
文字サイズに関するルールは個人の好きなようにして良いですが、自分が決めたルールを厳守してスライドを作ることが大事です。そうすることで統一感が出るので、聴衆が無駄なことで迷うことがなくなります。
僕の場合は、常に使う文字サイズを6種類と決めています。
大きい順に
- スライドタイトル(とページ番号:これはそんなに大きくなくても良いとは思います)
- 強調したい言葉
- 地の文として書く文字
- 図に書き込む文字
- 図の数字
- 参考文献
としています。6種類が多いと思う人はもっと減らしても良いかもしれません。
文字サイズについては、(対面での発表の場合は)1番小さい文字が会場の後ろの席からでも見えるようにすると良いでしょう。
事前に会場の広さがわからない場合は、少し文字サイズを大きめにしてスライドを作っておくと安心です。
スライド番号を「N/総ページ数」で書く
スライド番号を書くことで聴衆が質問をするときに「N枚目のスライドに戻ってください」と言うことができるので、質疑応答が円滑になります。
ちなみに、以前僕の所属する研究科での修士論文審査会(修論発表会)の時、ある学生が審査員から「スライド番号がないと質問したい箇所にすぐ辿り着けないのでスライド番号を書いてください」とコメントをもらっていたことがありました。
皆さんも研究発表の時には質疑応答が円滑になるようにスライド番号を書いておきましょう。
また、総ページ数(本記事の例では31)が書いてあると現在のスライドが全体のどの部分に位置するかがわかるので、聴衆はいつまで話を集中して聞けばいいかがわかります。
地味ですが、僕のような堪え性のない聴衆にとっては意外と重要なポイントです。
ページ番号を書く際には、マスタースライド(Keynote)かスライドマスター(PowerPoint)を編集すると一括で変更できます。
僕の場合は右上に大きめにページ番号を書いていますが、ページ番号は情報として重要じゃないので右下の方に小さく書くのもアリです。むしろその方が良いかもしれません。
矢印の代わりに三角形を使う
スライド中に大きい矢印を書きたい時は、矢印の代わりに三角形を使いましょう。その方がスッキリして見えます。
文中に矢印を書くときは「A→B」のように普通の矢印の方が綺麗だと思います。適材適所でより綺麗に見える方を選びましょう。
発表する言語に合わせた言語でスライドを作る
僕は日本語で発表する時は日本語で、英語で発表するときは英語でスライドを作るようにしています。
日本語の発表で英語のスライドを使う人が割といますが、日本語の発表の時はスライドも日本語で書かれている方が当然聴衆の脳に負担がかからないので、発表する言語に合わせた言語でスライドを作りましょう。
国際学会で使った英語のスライドをそのまま国内学会に使い回すのはただの手抜きです。
僕はもう何年も「発表する言語に合わせた言語でスライドを作る」というこだわりをもち続けていますが、最近は適度に手を抜く方が賢いのかなぁと思ったり思わなかったりします。(時間は有限だからこだわりを捨てて時短を選ぶべきかも……)
1スライド1メッセージについて
これは非常に有名で大事な要素ですが、「1スライド1メッセージ」はスライド作成のテクニックと言うよりは、論理構造のお話なので本記事では触れないことにします。
論理構造を上手に構築する力を磨くためには、思考法や文章の書き方などを学ぶと良いと思います。
それに関する本は『考える技術・書く技術』が有名ですね。
発表練習
ここでは発表をする際に
- どんな言葉を
言うべきか or 言わないべきか - どんなふうに練習をするか
などを紹介します。
発表の冒頭で自分の学年を言わない
これは僕の研究室(指導教員)の流儀ですが、発表の時に自分の学年を言わないように指導されています。
その理由は、学会で発表をするということは「学生ではなく一人の研究者として演壇に立つ」ということだからです。
自分が学生であると示すことで予防線を張ってはいけません。
もちろん詳細の所属(学年)を示す必要がある場合は例外です。
発表の冒頭で自分の発表タイトルを読み上げない
これも弊研究室の流儀ですが、発表タイトルを読み上げても書いてあること以上の情報が得られないので、発表タイトルを読まないように言われています(学会発表の練習の時にタイトルを読むとちょっと怒られます)。
タイトルを読み上げる代わりに「本発表では、〇〇を使うことで××の現象に△△が関わっていることを示した、という研究をご紹介します」のように、研究の概要を言うように教育されています。
よく冒頭で「〇〇大学修士2年の××が、△△というタイトルで発表をさせていただきます」とか言う人がいますけど、こういうテンプレがどこかにあるんですかね。
タイトルを読み上げるだけでは何の情報もないので、せっかく同じ時間だけ喋るならスライドに書いていない新しい情報を追加しましょう。
略語・専門用語を繰り返さない
その略語のフルネームや専門用語の意味を聞き逃してしまったり忘れてしまったりした瞬間に聴衆はその後の話についていけなくなってしまうので、できる限り略語・専門用語を繰り返さないようにしましょう。
そのために具体的にやることは
- 略語は必ずフルネームで言う
- 専門用語を言うときは(くどくならない程度に)手短にその説明も繰り返す
です。
どうしてもプレゼンの都合上、略語・専門用語を繰り返し言わなければいけない場合は、リマインダーとして常にスライドの端の方にその説明を載せておくと親切です(下図の右下の「PhD: The doctor of philosophy」)。
聴衆は神なので、聴衆があなたの説明を多少聞き逃したり忘れたりしてしまっても発表の内容を理解できるようにおもてなしができると良いですね。
何度も何度も発表練習をする
とにかくたくさん発表練習しましょう。
月並みですが、これが本記事で1番言いたかったことです。
結局たくさん練習することでしか物事は上達しないんですよね。
まさに「Practice makes perfect」です。(この英語の諺の日本語訳は「継続は力なり」ですが、僕は英語版の方が好きです。なんとなく英語バージョンからは「練習っつーのがマジで大事なんだよぉ!」っていうニュアンスを感じるので。)
僕は修士1年の頃はフォーマルな学会の前には通しで少なくとも30回は発表練習をしていました(説明が難しいスライドはさらに追加で練習していました)。
30回の練習と言うとめちゃめちゃ大変に聞こえるかもしれませんが、発表時間が20分の場合 20分 × 30 = 10 時間 なのでたった丸1日だけ発表練習に使えばこれだけ練習できます。こう聞くと意外と大変じゃないですよね?
こんなにたくさん練習をする人は僕の肌感覚的に100人に1人もいないので、たった1日発表練習に時間を費やすだけで単純計算で上位1%より高いレベルの発表をすることができます。
発表賞もある学会の場合、これくらい練習しておけば大体賞を受賞することができます(受賞するメリットは後述)。
僕が目安として30回と言っているのは、練習回数が20回を超えたあたりで頭で考える前に言葉が出てくるようになって、それ以降の練習では声の抑揚や間の取り方など話す内容以外の要素にも気を使う余裕が出てくるからです。
もちろん元々話すのが上手な人ならこんなにたくさん練習しなくても良いかもしれません。
練習しなくても上手に発表できるのであれば、こんなに発表練習に時間を割かずに研究を進めた方がよっぽど身になります。
僕は研究始めたての修士1年生の頃は学会発表本番でセリフが飛んで恥をかくのが本当に心の底から嫌だったので、30回以上練習せずにはいられませんでした。
最近では少ない練習でもそれなりのクオリティで話せるようになったので、研究発表の前には5~10回程度しか練習していません。(とはいえ周りの人に話を聞く限り5回でも多いらしいですが。数回の練習で本番に臨めるくらい話し上手で肝が据わっている人が羨ましい限りです。)
発表時の注意点
対面での発表時の注意点を挙げておきます。それは聴衆の方に体を向けることです。
あなたはスライドが投影されたスクリーンに話しかけているのではありません。
話を伝えるべきは聴衆であるので、話す時には聴衆の方に体を向けましょう。
その方が聴衆もあなたの話を聞こうと思ってくれますし、あなたに自信があるように見えます。
発表賞がある学会の場合、自信満々に喋るだけでも賞が取れる確率が上がるので立ち振る舞いも割と重要です。
仮に内容が完璧に伝わらなくても「なんかこの人すごそう」と思ってもらえれば評価してもらえます。
聴衆の方に体を向けるために練習の時から本番を想定して立ち位置も意識しておくと良いです。
自分がスクリーンに向かって左側/右側に立つときは左手/右手にポインターを持つようにしましょう(下図)。そうすると自然と聴衆の方に体を向くからです。
また聴衆の方を向いて喋るために、スライドを横目で見て喋る練習をしておくのも効果的です。(僕は修士1年の頃は身振り手振りとかまで練習していましたが、振り返ってみると研究発表はTEDトークじゃないからそこまでやるのはやりすぎだったかもしれません。)
個人的オススメの練習方法
発表練習をする時は、完成した発表スライドを紙に印刷してそこに話すことをメモするとやりやすいです(iPadなどタブレットを持っている方はスライドをPDFに変換してそのPDFに書き込んでも良いですね)。
そのスライドを印刷した紙(またはスライドのPDF)の空いているスペースに、自分が喋ることを書き足します。
先ほどスライド作りに関する章で「スライドにはキーワードだけ書いて足りない部分は喋りで補うようにする」と書きましたが、この喋りで補うべきセリフを書き込むイメージです。
それを使って練習すると喋る内容が効率的に頭に入ります。
余談ですが、僕が修士1年生だった頃は毎回PCのメモ帳に原稿を全て書いていました。当時はスライドに書いてあるキーワードや図のラベルまで原稿として文字に書き起こしていたのですが、それはあまりにも非効率だったので、最終的にスライドに文字を書き込むこのスタイルに落ち着きました。
研究発表のモチベになりそうなおまけ2つ
発表賞を取ることのメリット3つ
業績として書類に書ける
発表賞を取ることの1番のメリットは、自分の業績欄に「発表賞受賞」と書けることです。
博士課程に残って学振の書類などの申請書を書く人も就活でESを書く人も、アピールポイントとして「物事をわかりやすく説明する能力があります」と自信と根拠をもって主張できます。
ただ単に「私は説明力があります」と言うだけより「私は説明力があります。実際に〇〇という学会で発表賞を受賞しています」と言った方が説得力が何倍も何十倍もありますよね。
発表賞は自分の能力を示す証拠となってくれるので、業績を集めておくのは良い人生戦略だと個人的に強く思っています。
発表前に30回くらい(たった10時間程度)発表練習するだけで「自分の能力証明書」を手に入れられるなんて、非常にコスパの良い投資だと思いませんか?
シンプルに嬉しい
自分が優れた人間であるように思えて気分が良いです。
ただし、研究発表が上手いことはその人の研究能力の高さを示しているわけではないので、発表賞を取ることは(業績になることを除けば)ただの自己満足であることには注意しなければなりません。
そうは言っても自分が何かを成し遂げたという達成感を得られるのは気持ちの良いものです。
せっかく発表するんだったら、発表賞をもらわないよりもらった方が嬉しいですし。
実利がある場合も
研究発表賞をもらうと、副賞として図書カードなどがもらえることがあります。
僕は以前に発表賞を頂いた時、20分間のプレゼンで2,000円分の図書カードがもらえました。
これを時給換算すると6,000円です。こんな割の良いバイトはありませんよね?この時給で1日8時間、年間200日働くと年収は1,000万円くらいになります。年収1,000万円相当のプレゼンができたと思うと気分は最高です。
……とまぁ準備時間を考えろというツッコミ待ちはさておき、自分が頑張った時にたとえ少額でもこういった報酬・インセンティブがもらえるのは、自身の努力を認めてもらえたと感じて嬉しくなります。成果に対して正当な報酬がもらえるのは良い世界ですね。
僕が研究発表が苦手だった時の話
「たくさん発表賞を受賞しているってことは元々プレゼンが上手かったんでしょ」と思う方がいるかもしれませんが、全っ然そんなことはありませんでした。
僕自身そもそも「人前」も「話すこと」も苦手な人間です。
発表が上達した今でさえ、しなくて良いのであれば研究発表はしたくないと思っているほどです。
そんな僕が研究発表が下手だった時の話をします。
ちょっと長いので先に一文でまとめておくと、「研究発表が苦手な人であっても意外と少ない練習時間で上手くなれる」という話です。
すでに上の方で同じことを何度も書いていますが。僕の自分語りに興味がない方は読み飛ばしてください。
僕が研究発表に初めて取り組んだのは学部4年生の卒業研究発表の時でした。本番の発表の前に研究室内でリハーサルをやったんですが、それがあまりにも酷かったんですね。どのくらい酷かったのかと言うと、僕の発表を聞いていた研究室の同期に「ごめん、申し訳ないけど正直なところ何もわからなかった」と言われるほどでした。そう言われた時のショックは今でも忘れられません…(これがきっかけで研究発表に真剣に取り組むようになったので、今ではそう言ってもらえて良かったと思っています。ありがとうM君。)
さらに酷いことに、発表の持ち時間は15分だったんですけど、そのリハーサルの時は22分くらいかかってしまいました。7分も余計に喋ったのにもかかわらず全く内容が伝わっていなかったということです。あまりにも自分の研究発表が酷かったため、当時は研究発表なんてこの世からなくなれば良いのに、とさえ思っていました。そう願っても研究を続ける限り研究発表をする機会は何度もやってくるので、どうにか苦手を克服しなければなりません。とりあえず迫る卒業研究発表は原稿を書いてそれを一語一句違わず丸暗記することで、何とかやり過ごすことにしました。丸暗記するために何度も何度も練習している内に自然と練習回数は30回以上を超えていたと思います。この丸暗記のおかげで卒業研究発表は悪くない程度に終えることができました。
それでも卒業研究発表では原稿を丸暗記しただけで、喋ること自体が上手くなったわけではありませんでした。大学院進学後に立ちはだかる数々の研究発表の機会を凌ぐには、どうにか研究発表を上達させなければなりません。なので、とりあえず喋るのが上手くない僕は、喋りの上手さではなくスライドの見やすさで勝負することにしました。視覚的にわかりやすいスライドを作ることで、上手じゃない喋りを補う作戦です。それでスライドデザインを勉強をして試行錯誤するうちに上記のようなスライドのスタイルに落ち着きました。ただ、いくらスライド作成が上達しても研究発表では喋らないといけないので、結局毎回研究発表の前には何度も練習を繰り返していましたが。
そうこうしているうちに、学会で発表賞を取ることができたり、周りの人から「発表わかりやすい」とか「スライド綺麗」とか言ってもらえたりするようになりました。元々苦手だったことで周囲に評価してもらえた時の感動は、えも言われぬ思いでした。今でも別に人前も喋ることも得意だとは決して思いませんが、これまでの努力によって「研究発表が上手い側」の人間にはなれたのかなと思っています。
こんなふうに長々と僕の苦労エピソードを話すと僕がものすごい量の努力をしたように聞こえるかもしれませんが、実際は全然そんなことはありません。スライドデザインの本なんて研究発表のためであれば1冊読むだけで十分ですし、1冊なら1日や2日もあれば読み終わります。また、先ほども言ったように30回練習するのも1日あれば十分です。2ヶ月に1回のペースで学会などで研究発表をするとしても、研究発表の練習に割く時間は年間たった6日だけなので、日々研究に割く時間に比べれば微々たるものですよね。僕みたいに人前も喋るのも苦手な人間であってもたったこれだけの練習をするだけで学会で発表賞を取ることができると思うと、研究発表の練習のコスパってものすごく良いと思いませんか?
…とまぁ「ちょっと練習すると発表は上手くなる」ということを言いたくて長々と僕の体験談を書いてみました。
この話を読んで「研究発表がんばってみよう!」と思ってくれる人がいれば筆者冥利に尽きます。
研究をする全ての人の発表力が上がって、研究の知識の共有が今よりもっとスムーズになったら嬉しい限りです。
まとめ
というわけで今回は主に、わかりやすい研究発表をするための方法を
- 研究発表の心構え
- スライドの作り方
- 発表練習
の3つに分けてお話しました。少しでも役に立ちそうと思う部分があればぜひ取り入れてみてください。
熱がこもってたくさん書いてしまいましたが、特に伝えたいことは
- スライド作成のときにはとにかく揃える
- スライド作成のときには文を書かない
- 発表が苦手でも何度も練習すれば上手くなる!
の3点です。
最初に書いたように研究発表のやり方には絶対的な正解はないので、本記事の内容を鵜呑みにするだけでなく、自身で工夫しつつ発表準備に取り組んでみてください。
本記事が皆さんの研究発表上達の一助となれば幸いです。
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皆さんの面白くてわかりやすい研究発表を聴けることを楽しみにしています。
それでは!
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