【理系博士】民間就活体験記【非研究職】

研究

どうも、博士課程の後にアカデミアを離れる31等星です。
(アカデミアを離れることにした理由は以下の記事。)

僕は実生活に役立たない基礎研究(物理系の研究)をしているので、「民間企業に就職する」=「非研究職に就く」ということになります。

本記事では、そんな僕の民間企業の就職活動についてお話しします。

以下では、

  • 就職先の業界
  • 面接でよく聞かれたこと
  • 就活における博士のメリット・デメリット

を綴ります。

博士課程から民間企業に就職したいと考えている方や、就職の問題で博士課程進学を悩んでいる方の参考になれば幸いです。

就職に関しては多くの方が気になるところだと思いますので、サンプル数1の体験談ですが僕の例を紹介します。

それでは本題。

就職先の業界

ざっくり言うと、教育関連の業界に就職することに決めました。

就職活動自体、文系の学部生と同じ土俵で行っていたので所謂「文系就職」というものに該当します。

こう言うと「博士課程まで進んで学部生でも就職できるところに行くなんてもったいなくない?」と聞かれそうですが、僕はこの選択で良かったと思っています。

その理由は、次に話す僕の志望動機にも関わっています。

僕の志望動機は「自分の得意を生かした仕事をしたい」でした。

僕の得意は、学会発表・ゼミ発表で培ったプレゼン力です(わかりやすい学会発表の方法について綴った記事がこちら。力を込めて書いたのでこちらも読んでいただけると嬉しいです!)。

そのプレゼン力を活かして「難しいことを噛み砕いてわかりやすく伝えるスキル」が役立つ企業に就職することにしました。

就職難易度も低くはない企業のはずなので、僕の場合は大学院に進学していなければ内定を獲得することはできなかったと思います。

大学院でプレゼン力がついたおかげで就職できた部分が大きいと思っているので、理系博士からの文系就職という自分の進路に満足しています。

ついでに就職先の企業の良いところを挙げると、知名度がそこそこあって給料も悪くないところ。(福利厚生なども含めた実質の手取り給料は学振DCの2倍以上になるんじゃないでしょうか。)

面接でよく聞かれたこと

ここでは僕が面接の際に聞かれたことをお話しします。実際の僕の回答例なども混じえながら。

博士まで行ったのに研究を続けない理由も含めた志望動機

これは面接の冒頭でまず最初に聞かれた質問です。

この質問に関しては、ポジティブな面に加えてネガティブな面も正直に答えていました。

  • ポジティブな面
    :得意(プレゼン力)を生かせる業界で働きたい
  • ネガティブな面
    :研究の世界で生き残っていくのは厳しいと感じた

実際に面接ではこの2点を合わせて以下のように喋っていました。

「伝えること」にフォーカスした職業に就きたいと思ったので、この業界を志望しています。

博士課程まで研究を続ける中で『研究ではこの人には叶わないなぁ』と思う人とたくさん会って来ましたが、わかりやすくて面白いプレゼンをすることに関してはそういった人たちにも負けない自信があります。

実際に今までに参加した学会で優秀発表賞を4回頂いているので、僕のプレゼン力は周囲の人にも認めていただいています。

この「伝える力」を生かして〇〇(会社名)で働きたいと思っています!

多くの面接官はこれでかなり納得してくれた顔をしていました。

深く掘り下げて聞いてくる面接官には追加で以下のことを聞いてきました。

「伝える仕事」はいろいろあるけどなぜこの会社?

(「学校の先生になることは考えていないの?」のようなニュアンスを含んでいた質問でした。)

詳細を話すと企業がかなり絞られてしまう可能性がある気がするのでぼんやり書きますが、大雑把には「僕の得意または好きな業務に長く触れることができそうな企業を選んだ」というものです。

「『何が好きか』ではなく『何をするのが好きか』で仕事を選ぶ」という『苦しかった時の話をしようか』で言われていることに通ずることを面接では答えていました。

そもそも僕が業界を選んだ基準には「自分の得意を生かせること」だけでなく「自分の好きなことができること」も含まれていたので、志望動機関連の質問で困ることはありませんでした。

やっぱり「就活はマッチング」ですね。

わかりやすく伝える上で意識していることを教えてください

これは僕が「わかりやすく伝えること」を武器にして就活していたのでよく聞かれました。

正直意識しているポイントは無限にあるのですが(「わかりやすい学会発表の方法について綴った記事」にたくさん書いています。再度宣伝)、面接で話していたのは以下の2点です。

以下解答例。

いろいろありますが、個人的に重要だと思うことが2つあります。

1つ目が図をたくさん使うことです。
人間は耳で聞いたものより目で見たものの方が早く理解できるので、できる限り図をたくさん使って説明するようにしています。

2つ目が情報を出す順番です。
物事を理解するには段階を踏まないといけないので、例えばABCDEのEの内容を相手に伝えたい時には「AだからB、BだからC、CだからD、DだからE」のように順を追って説明することを心がけています。

2つ目の「情報を出す順番」に関しては、「旧情報から新情報から繋ぐ」という文章術や説明の方法に関する本で言われていることを僕なりに言語化したものです。

以下の2冊に似たようなことが書いてありました。僕のオススメは『論理が伝わる世界標準の「書く技術」』。

こちらの本は以下の記事でも紹介しています。本書は本当にオススメなので全人類必読。僕の棺桶に入れてほしい本です。

研究について簡単に教えて

これも僕が「わかりやすく研究を伝えることが得意」と言っていたので、よく聞かれた質問です。

面接中のボーナスステージ。普通に答えました。面接官に「流石、わかりやすいね!」と言ってもらえたので良かったです。

そのリアクションに対して「伝わったようで嬉しいです!わかりやすく伝えることが得意とか言いながら『よくわからない…』みたいなリアクションをされたらどうしようかと思いました!笑」とか付け足して適当に面接時間を消費することに勤しんでいました。

研究をやめることに対する後悔とか研究のやり残しとかない?

これも割と聞かれた質問です。

質問の意図は「就活後にやっぱりアカデミアに残ろうと思わず本当にうちの会社に来てくれるか」を確認したいということなんでしょうか。

この質問には以下のように答えていました。

後悔に関して
ないと思ってこの面接に来ました!やっぱり自分の得意を活かしたいので〜(以下略)

やり残しに関して
就活終了後の残りの研究生活でやり残しがないように頑張ります!

博士まで行って普通に就活するの珍しくない?

これは僕へのパーソナルな質問をしたかったというよりは面接中の雑談的なものでもあったように思いますが、この質問も頻繁に聞かれたものです。

実際は博士課程の後に民間企業に就職をする人も少なくないので、それをそのまま伝えました。

また、回答に対して追加で「どういう系に就職する人が多いの?」と聞かれることも多かったので、以下の回答例にはその回答も含めてまとめて書きます。

意外と研究を続ける人と民間企業に就職する人は半々くらいですね。

僕の研究分野では研究の際にプログラミングを使うので、多くの人はそのプログラミングスキルを生かしてメーカーとかIT系に就職する人が多いです。

先輩の中には〇〇とか××(会社名)に就職した方もいますね。

余談ですが、僕はプログラミングが好きじゃないので上記の業界には絶対に行かないと心に誓っていました(これについても最初に紹介した「僕がアカデミアを離れる理由を綴った記事」に書いています)。

学部の時とか修士の時とかは就活はしてない?

全くしていなかったので正直に答えました。

していません。元々研究者になりたくて脇目もふらず研究だけしてました。

研究を続けるうちに自分の得意なことが見つかって、それ(わかりやすく伝えること)を生かせる職業に就きたいと思うようになったので、就活に舵を切りました。

余談ですが、僕は修士1年の夏頃に髪をブリーチして明るめの色にしていたのですが、その時に同期の友人に「それは就活しないって意志の表れなの?笑」みたいに言われました。

全然そんなつもりはなかったのですが、当時はそれくらい就活を意識していなかったということですね。

面接で嘘を吐くことに関して

(聞かれた質問ではありませんが、記載しておきたいと思ったのでここに書きます。)
基本的に面接では嘘はつかず正直ベースで話していました。

もちろんバレない程度に話を盛る(面接用に多少脚色する)くらいはしましたが、大きな嘘は吐いていません。

唯一吐いた嘘は、第一志望じゃない会社に「第一志望です」と言ったことです。そこを第一志望と言える理由はちゃんと用意していたので許してください。

就活における博士のメリット・デメリット

メリット

レア度

僕が行く業界での就活の場合に特に当てはまることですが、博士であること(さらに理系であること)が周囲との強烈な差別化になることが大きなメリットだと思います。

上述のように、僕の行く業界では多くの応募者が文系の学部生なので、理系博士はものすごくレア度が高いです。

その結果、面接官の印象に残りやすいので面接の通過率が高くなっていたと思います。

実際内定後に面接官だった方と話す機会があったのですが、その方が「31等星くんみたいに経歴が珍しい人は印象に残るし面接でも色々聞けて楽しいから面接で通そうって思う」みたいなことを仰っていました。

本気度

上記と少し被る内容ではありますが、博士課程まで進んだのにわざわざその会社の採用面接を受けに来ているという時点で本気度合いが伝わると思います。

もちろんちゃんとした志望動機があることは前提ですが、面接の時に「博士課程で経験したことを踏まえてこの会社を志望している」という由を伝えられれば、面接官が深く納得してくれるはずです。

ついでに僕は地方住みだったこともあり、遠くから面接を受けに来ていることも含め「本気度」が伝わっていたと思います。多分。

基礎的な能力の高さ

博士課程まで研究を続ける間に身につけた諸々の能力が就活のアドバンテージになっていました。

コミュ力が大事と言われがちな就活で隠キャコミュ障の僕がそこそこ上手くやれたのは、博士課程でいろんな経験を積んで様々な能力を身につけたからだと思っています。

以下では、就活に役立った博士課程の経験を3つ紹介します。

文章力

卒論・修論・投稿論文などを書いた経験によって、文章力が高くなっていることが1つ目のアドバンテージです。

就活ではエントリーシートを書くことになるので、そこで文章力が発揮されます。

僕は就活のためのコミュニティに入っていたのですが(詳細は後述)、そこで知り合った人に僕のエントリーシートを読んでもらった際に「文章わかりやすい!」と言ってもらえることが多かったです。

また、僕自身がそのコミュニティで知り合った学部生のエントリーシートを読む機会もあったのですが、多くの学部生の書く文章は普通にわかりづらいと思いました(すみません)。

正直に言うと「論理や文章の流れがめちゃくちゃで何を伝えたいかわからない」というものが多かったです(本当にすみません、でも本当なんです)。

やっぱり卒論・修論・投稿論文などを書いてそれを人に添削してもらうという経験は文章力向上に非常に重要なんだと実感しました。

プレゼン力

学会発表やゼミ発表で培ってきたプレゼン力が面接の時に役立ちました。

僕の場合はプレゼン力を生かせる業界に就職しましたが、そうでなくてもプレゼン力は面接の時に役立つはずです。

そもそも面接というものは「自分という商品のプレゼン」なので、プレゼン力があればそんなに難しいものではありません。

面接の際には
・自分がなぜその会社を志望しているのか
・自分がなぜその会社に貢献できると言えるのか
などを論理的に説明すれば良いだけなので、研究生活における数々の発表で鍛えられている人にとっては、面接はそこまで大変なものではないと思います。

実際僕は、同業界の採用面接では1次面接や2次面接で落とされることはありませんでした。(偉そうに語っておきながら面接全勝ではありませんが。)

人生経験

学部生が就活をする時期の学部3年の終わり頃に彼らは3年間の学生生活を過ごしている一方で、博士2年の終わり頃に就活をしていた僕はその時点で8年間の大学生活を過ごしているので、単純計算で2倍以上大学生活の経験がありました。

しかも僕と同時期に就活をしていた学部生はコロナ禍のせいでほとんど経験と言える経験をしていない人が多かったので、その意味でも大きなアドバンテージだったと思います。

僕は長く学生生活を送っていたおかげで、就活で話すエピソードに困ることはありませんでした。

と言いながらも、面接で学部生時代の話を振られたことはほとんどなかったので、経験が2倍以上あると言っても実質1.5倍分くらいだったかもしれません。

基本的に面接で聞かれた内容は上記のように研究生活・大学院生活の話が中心でした。もちろん僕が大学院以降の話しかエントリーシートに記載しなかったこともあるとは思いますが。

デメリット(と対処法があれば)

専門知識が役立たない

博士課程までで身につけた専門知識が直接就職に役立つことがほとんどないことは大きなデメリットかもしれません。

専門知識を生かせる企業を選ぼうと思うとかなり企業が限定されてしまいます。

基礎研究をする僕の場合は専門知識を生かせる企業がないことが初めからわかっていたので、自分の得意なポータブルスキル(プレゼン力)を生かせるという軸で企業を探していました。

また、専門性の求められていない学部生と同じ土俵で就活をすることで、このデメリットではなく上記のメリットが際立つようにもしていました。

戦う土俵を選ぶのは大事ですね。

就活に充てられる時間が少ない

これも人によっては大きなデメリットになると思います。

僕の所属する研究室はフレックスタイム制なので、僕は就活中の約3ヶ月はほぼ研究の手を止めて就活に充てていました。

就活中に研究関連のことでやっていたことは、時々論文を読んだりゼミに参加したりくらいです。

就活のためにほとんど研究を止めていたので、就活後に研究に戻ってから進捗のなさに苛まれることはありました。

両立できる器用な方なら良いと思いますが、僕のようにマルチタスクが苦手な方は指導教員と相談して就活中は研究の手を止めることをオススメします。

周りに就活している人が少ない

「就活は情報戦」とも言われるくらい情報収集が大事なので、周囲に就活している人が少ないことは大きな問題だと思いました。

理系博士の僕の周りには文系就活をしている人が皆無だったので、情報戦で負けないようにインターネットで見つけた就活コミュニティに入っていました。
上述のように、そこで知り合った就活生とお互いにエントリーシートの添削をしたり面接の想定質問を投げ合ったりしました。

と言いつつ、振り返ってみるとこのコミュニティがめちゃめちゃ役に立ったかと言われるとそこまででもない気がしますが、ちゃんと準備したおかげで面接でも落ち着いて話せたと思います。

ググるだけでも情報を得るには十分かもしれませんが、安心材料としてできる限りの準備をしておくことは大事だと思います。

まとめ

というわけで、本記事では僕の就活体験記を綴りました。
博士課程から民間企業に就職したいと考えている方や、就職の問題で博士進学を悩んでいる方の参考になれば幸いです。

巷でよく「博士課程に進学すると就職できない」と言われますが、僕は全然そんなことないと思います。博士課程に進学して就職できなくなるような人は、それ以前のところに問題があるのではないでしょうか。

余談ですが、僕の内定先の同期にもう1人博士の方がいました。その方も同じような志望動機で入社することにしたようです。
広く見渡せばどこかに仲間がいるものなんだと思いました。博士課程以降の進路に悩んでいる方も、ぜひ世間を広く見渡すようにしてみてください。きっとどこかに仲間がいるはずです。
(と言いながら、この記事を読みにきている時点で世間を広く見渡そうとしている証なので、心配はいらない気もします。)

そんな感じで僕の就活体験記でした。

良かったと思ったらSNSで拡散してくださると嬉しいです。
それでは、ご自身の進路をよく考えて素敵なキャリアを築いてください!

また次の記事でお会いしましょう。

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博士課程・ポスドク・助教などの後にアカデミアを離れた方々が現在どんなことをしているかがオムニバス形式でまとめられている本です。

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